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「利益を最大化するインセンティブ」と「顧客から選ばれるレコメンド」の設計方法

株式会社エニグモは日本にいながら世界中のファッションアイテムを簡単に安全に、そしてお得に購入できる海外ファッション通販No1サイト「BUYMA」を運営する企業です。1,000万人以上の会員に向けた顧客育成領域の施策や分析において、2019年からEngagement Data Platform「aimstar」をご活用いただいております。

2021年にMAツールの運用を行っているソーシャルコマース事業本部 データ活用推進室の嘉松氏に、MAツール導入検討の背景やaimstarの選定理由、既存顧客への施策や成果をお聞きしました。(2021年のインタビューはこちら)

今回は2021年のインタビュー時に実施を希望されていたポイントとクーポン施策の使い分けや、600万以上のアイテムを扱うBUYMAにおけるレコメンド施策等を嘉松氏にお伺いしました。

利益を最大化するクーポン・ポイント施策の使い分け

<スプリームシステム>
2021年のインタビュー時にクーポン施策で効果が出たため、今後の取組みとして、aimstarのポイント自動連携機能を活用したポイントの1to1付与施策を希望されていました。既に取り組みは開始されましたか。

<エニグモ 嘉松氏>
はい、現在はクーポンとポイント、両方の施策を行っています。クーポン施策はaimstar導入当初の2019年から自動連携しており、2021年から追加でポイント連携も開始しました。

<スプリームシステム>
それぞれ、どのような役割や目的で実施しているのでしょうか。

<エニグモ 嘉松氏>
BUYMAでは、これまで様々な試行錯誤をした結果、現在ではクーポンとポイント施策は次のように使い分けています。

クーポンは既に購入意欲をお持ちだが購入に至っていないユーザーに対して、購入を後押しする役割です。それに対してポイントは初回購入や離反防止、休眠復活等のCRM施策として活用しています。

ユーザーの購入を後押しするクーポン活用

<エニグモ 嘉松氏>
まずはクーポンに関する理由です。
弊社に限らず様々なサービスから日常的に届くため、消費者はクーポンに慣れています。クーポンを使わない事による勿体なさや損といった感情は薄くなっていると思います。そのため、クーポンの利用用途は、欲しいものが既にあるユーザーに対して、商品購入の後押しをするためです。最低購入金額を設定でき、ある程度利益をコントロールできるのもクーポンの良い所です。

<スプリームシステム>
クーポンは購入意欲を持っているが購入を躊躇しているユーザーにお送りするとのことですが、クーポンを利用することで利益低下にも繋がると思います。何か工夫をされていますでしょうか。

<エニグモ 嘉松氏>
仰る通り、利益低下に繋がるため、非常に購入意欲が高いと推測されるユーザーにはあえてクーポンは付与しておらず、購入を躊躇しているユーザーに絞ってクーポンを付与しています。

<スプリームシステム>
ありがとうございます。
続いてポイントの使い分けの詳細についても教えて下さい。

CRMの一環としてのポイント活用

<エニグモ 嘉松氏>
最低購入金額や使用カテゴリー等の制限があるクーポンと異なり、ポイントの使用にはそのような制限がありません。非常に利便性が高いため、ユーザーから見ると、ポイントはお金に近い感覚があります。ポイントの失効は、1度自分が稼いだお金が無くなるような感覚に近いと思います。

しかし、最低購入金額が設定できないため、仮に1,000ポイントを付与して1,000円の商品を購入されると赤字になります。そのためポイントは初回購入や離反防止、休眠復活等のCRM施策として活用しています。

<スプリームシステム>
ポイントに関して、CRM目的で活用されているとのことでしたが、ポイントを案内する既存顧客はどのように判断されていますか。

<エニグモ 嘉松氏>
一定期間未購入のユーザーに絞っていますが、対象の全ユーザーに付与すると、利益が見合わなくなります。そのため、弊社内のロジックを用いて、更に利益に見合うユーザーのみに案内するようにしています。クーポンやポイント等によって商品の金額が下がった時のみ購入するユーザーには、これらのインセンティブは案内しないようにしています。

600万超えの商品のBUYMAが考えるレコメンドの重要性

<スプリームシステム>
ポイントやクーポンを案内する際に、商品もユーザー毎にレコメンドして案内されていますか。

<エニグモ 嘉松氏>
はい。カート放棄や閲覧放棄など、基本的に全てのシナリオでレコメンドを利用しています。
レコメンドにおいては、商品の力と商品画像の力がとても重要だと考えています。レコメンドの案内を受けた際に、自分が欲しい商品や閲覧した商品をもう一度見ることで、ユーザーはより一層興味をもってくれるためです。ユーザーに商品の魅力を伝える為に、多くのシナリオで商品画像を用いたレコメンドを行なっています。

<スプリームシステム>
BUYMA様は非常に多くの商品・アイテムを扱っていますが、レコメンド施策の重要性についても教えて下さい。

<エニグモ 嘉松氏>
弊社が考えるレコメンド施策の重要性は大きく3つあります。

1つ目は取り扱いブランド・商品数の多さです。
現在BUYMAでは約1万7,000種類のブランド・約600万点の商品と、非常に多くの商品を取り扱っています。そのため、漫然と何か商品を案内するだけでは、お客様には響きません。

2つ目はユーザー層の多様化です。
当初は20〜30代の女性に多く利用されていましたが、最近は男女問わず、年代も10代〜70代と、非常に様々な方々に利用いただいているサービスになっています。幅広い属性のユーザーに対してアプローチする際に、全体の売上ランキング等では、一人一人にはなかなか興味を持ってもらえない案内になってしまいます。その為、ユーザーの閲覧履歴等を基にした商品の絞り込み、つまりレコメンドが非常に重要だと考えています。

3つ目は商品の力と商品画像の力により、ユーザーに商品の魅力を届けられる事です。
先程お伝えした通り、ほとんどのシナリオでレコメンドを利用しています。現在はユーザーが閲覧した商品と関連性の高い商品をレコメンドする、商品ベースのレコメンドが主です。
理由として、既に購入済みのユーザーに再度買ってもらう事に加えて、同じ商品でも出品者が異なると違う商品と扱われるBUYMAの特性からです。値段も若干違ったりする為、ユーザーが興味のある商品を中心にしたレコメンドが現在のメインになっています。

今後の取り組みとして、商品購入後のユーザーに、同じ商品を買ったユーザーがよく買う商品等、リピートに繋がる購入ベースのレコメンドも実施していきたいです。

また、新規ユーザーや長期間の休眠ユーザーは、購買データや閲覧データが少なかったりする為、それを補うためのレコメンド商品選定ロジックをより工夫していきたいと思います。

<スプリームシステム>
これらのレコメンド施策は全てaimstarのレコメンド機能を用いて配信されているのでしょうか。

<エニグモ 嘉松氏>
はい。一部弊社のデータサイエンティストが選定したレコメンドロジックを使っていますが、殆どの施策はaimstarのレコメンド機能を使っています。

多様化するチャネルの活用状況

<スプリームシステム>
先程、ユーザーの多様化のお話がありましたが、顧客接点も多様化していると思います。
LINEやメール、アプリ等、顧客接点が様々ある中で、どのようなチャネルを用いて既存顧客とコミュニケーションを行っていますか。

<エニグモ 嘉松氏>
プッシュ型のコミュニケーションにおいては、メールとアプリプッシュ通知、LINEの3つのチャネルを使っています。パーミッションを取得した配信可能なユーザー数が最も多いチャネルは今でもメールです。その次にアプリプッシュ通知で、LINEが現時点では一番少ないです。一方で、送付数に対する購入率はメールよりもアプリプッシュ通知やLINEの方が高くなっています。購入の実数に関しては、配信対象者数が圧倒的に多いメールが一番多いです。

BigQueryとaimstarの連携による施策分析

<スプリームシステム>
1,000万人以上の会員をかかえ、多様なチャネルを活用されているBUYMA様は、膨大な量・種類のデータをお持ちだと思いますが、どのように分析しているのでしょうか。

<エニグモ 嘉松氏>
現在、BUYMAのデータはBigQueryをデータレイクとして保持しています。BigQueryにaimstarで保有しているメールやアプリプッシュ通知等の施策履歴やWeb接客履歴を連携しています。aimstarで保有している施策関連のデータとBigQuery内の他データを掛け合わせて分析に役立てています。

<スプリームシステム>
例えばどのような分析を行っていますか。

<エニグモ 嘉松氏>
基本的にはシナリオ毎に成果の分析をしています。一番よく行うのは配信数やクリック数、購入数等のファネルでの分析です。メールやプッシュ通知などチャネル毎のオプトアウト数も定期的に確認しています。

MA運用の内製化実現の3つの秘訣

<スプリームシステム>
ありがとうございます。
話は少し変わりますが、2021年のインタビュー時に、貴社のMD(マーチャンダイザー)の方々にもaimstarをご利用いただいているとお伺いしました。MAツールやCRM施策実行の内製化に成功している秘訣を教えてください。

<エニグモ 嘉松氏>
MAツールやCRM施策実行の内製化の実現の秘訣は大きく3つあります。

1つ目はトライアル・アンド・エラーのハードルを下げることです。
施策を実施したい時に、他部門や外部のベンダーに都度依頼すると施策実施までのハードルが高くなってしまいます。特に弊社の場合は、確実に効果があるような鉄板施策は既にやっているため、今後やりたい施策は、実際にやってみないと成果が出るか分からない施策ばかりです。そういった施策を都度依頼すると確実性が無くなり、実施までの過程で断念してしまう事にも繋がりかねません。自分達で施策実行ができれば、自分達のリソースを自由に活用できるため、内製化に取り組んでいます。

2つ目はコミュニケーションコストの削減です。外部のベンダーや他部門等に依頼すると要件定義が必要になったりと、コミュニケーションコストが発生しがちです。

3つ目は施策実行のスピード感です。先程お伝えした通り自分達で施策を実施できるようになれば施策のスピード感が出るため、内製化実現の為の教育や体制構築に注力してきました。

鉄板施策に次ぐ新たな顧客育成の一手

<スプリームシステム>
ある程度、鉄板施策をやり切ったというお話がありました。貴社のような大規模なtoC企業様から、「鉄板施策を既にやりきったため、次の打ち手を模索している」というお悩みをよくお聞きします。貴社は+αのような立ち位置の施策で、順調に成果が出ている施策はありますか。

<エニグモ 嘉松氏>
最もユーザーに近いため、MDが「商品を買っていただく為に、どのような見せ方をしたら良いか」を一番分かっています。そのため、MDから発想をもらい施策を試しています。例えば、最近新たに取り組み始めている年代別のランキングメルマガは成果が出てきています。
また、月の目標売上に対して進捗が思わしくない時には、一時的にクーポン施策をaimstarを通して行ったりしています。

データサイエンティストによるLTV予測

<スプリームシステム>
顧客育成施策の新たな打ち手としてAI活用が注目されています。貴社でもAIや機械学習を活用した施策は取り組まれていますか。

<エニグモ 嘉松氏>
弊社内のデータサイエンティストがLTV予測モデルを構築し、LTVが高いと予測されるユーザーにクーポンやポイントを付与して初回購入を促す取り組みを行っています。先程お伝えした通り、クーポンやポイントを全てのユーザーに配布すると利益に見合わないため、高いLTVが予想されるユーザーに絞ってインセンティブの付与を行っています。

大規模サービスにおけるaimstarの高いパフォーマンス

<スプリームシステム>
ありがとうございます。
最後にaimstarをご評価いただいている点や、今後のスプリームシステムへの期待について教えてください。

<エニグモ 嘉松氏>
aimstarの長所は、弊社のような1,000万人以上等、大量のユーザーを抱えている大規模サービスにおいても、安定的にシナリオを回し続けられることだと思います。
数十万人規模の顧客数であれば安定稼働できるツールはあると思いますが、数千、数万人規模の会員数で、かつレコメンドアイテムもあると、インフラが対応しきれない事が一般的だと思います。そのため、aimstarは大規模サービスにおいても安定稼働出来ることが最大の強みだと思っています。
今後の期待に関しては、安定稼働は既に非常に高いため持続していただき、引き続き機能拡張にも注力していただきたいです。

aimstarは顧客とのエンゲージメントを高め、LTVの向上を支援します!

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