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「食」を提供する3社の経営者が語る!「食」ならではのマーケティングの取り組み集

はじめに

7月28日(木)に「The Marketing Day presented by aimstar vol.3 ~価値ある情報を届けてファン化!”食”を提供する企業によるお客様への寄り添い方~」と題して、スプリームシステム主催のオンラインセミナーを開催しました。

本セミナーでは、食にまつわる3社の経営者をゲストにお呼びし、「商品の魅力をどう届けるか、「食」ならではのポイント」や、「継続購入へ繋げる、お客様ファン化を実現する手法」について語っていただきました。

~ご登壇者様~
・【Minimal – Bean to Bar Chocolate -】 を提供する 株式会社Bace 代表取締役 の山下貴嗣様
・【食べチョク】を提供する 株式会社ビビッドガーデン 取締役COO の 山下麻亜子様
・【三ツ星ファーム 】を提供する 株式会社イングリウッド 代表取締役社長 兼 CEO の 黒川隆介様

本ページでは、食ならではの各社のマーケティングの取り組みを抜粋して、ご紹介します。

「食べチョク」に聞く!
「食ならではの魅力」を届ける3つの工夫とは?!

<食べチョク 山下様>
魅力を届ける工夫は大きく3つあります。

1つ目は、見た目でおいしそうと思っていただくことです。
特に商品の写真には力を入れています。出品自体は生産者さん達が行われるので、勉強会の開催や、写真撮影のコツを伝播するような発信を行っています。

勉強会の講師は食べチョクのスタッフだけではなく、生産者さんにもやっていただいています。写真撮影がすごく上手な生産者さんと、苦手意識を持たれてる生産者さんの両方がいらっしゃいます。「曇りの日に畑仕事に行くときに、こういうところで撮るといいよ」のように、実用的な話も多く生産者さんが明日から挑戦できるような学びが得られる場作りを心掛けています。

2つ目は、生産者さんご自身がこだわりを書いて直接魅力を伝えられるようにすることです。
我々も発信はしますが、味の表現や、味以外の特徴や、今しか食べられない旬などを生産者さんがしっかりアピールできるように、商品ページや生産者ページでアピールする欄を作っています。

3つ目は、最後は食べないと良さがわからないので、食べた人に感動を伝えてもらうレビューをすごく大事にしています。自分ではレビューを書かないが、レビューを見て購入を決められるお客様も多いので、「こんな美味しいきゅうり食べたことありません」や、「あの百貨店行ったらもっと何倍もするのにすごいお得です」など購入された方の感想が見やすいページ作りを意識しています。

Minimalが実践している
SNSの使い分けとは?!

<Minimal 山下様>
Twitterでは、ライトなお客様をリアルタイムで獲得したり、時事的な情報に切り込んでいます。時事的な問題に切り込んでいくことで、シズル感や美味しさだけではない、自分達が帯びている社会性にまつわる問題への興味関心を通じて、リツイートが広がっていく外部拡散性を評価しています。知らない人がリツイートしてくるので、すごく意味のあるものだと考えています。

当然、Instagramでは写真をのせています。

また、山下個人のnoteとMinimal全体のnoteをやっています。
ビジネスサイド寄りのお客様を取りたい時は、お客様のUXや、僕がどういうふうにブランドを作ってるか、どんな思いでこのビジネスの構造を捉えてるかなどの話をnoteに発信しています。

Minimalに聞く!食をライフスタイルに
取り入れるための工夫とは?!

<Minimal 山下様>
SNSに写真を掲載するときに、ブランドの画角をどうするかをすごく気を付けています。

今までのMinimalは、商品半径30cm以内の写真がすごく多かったです。これはわかりやすいシズル感のあるプロダクトの訴求です。

しかし、僕たちがプロダクトだけではなくて、「ライフスタイルの中にMinimalのチョコレートがあるとオシャレ」や、「Minimalのチョコレートをひとかけら食べたら、気分が変わって機嫌がよくなれる」など、ライフスタイルという1個上流に上がっていく努力をしています。

そのために、少しずつですが、写真の画角を引いてます。例えば、「夏バテの時にカカオを1個食べたら元気が出る」や、「こういうライフスタイルにチョコレートあると良い」などです。

写真の画角を広げ、お客様がリーチする入り口を広げることを、特にInstagramのような写真では意識をしています。

            (画角を近づけた投稿)      (画角を引いた投稿)

Minimalが考える店舗の役割とは?!

<Minimal 山下様>
僕らは店舗をすごく大事にしています。

東京に2店舗ありますが、売上だけでなく、お客様が実際に体験する場所や、ストーリー、こだわりを伝え世界観を体感してもらう場所として位置付けています。そのため、「物を売る買う」ということを第一義にはしていません。食べていただく事が一番早いため、来ていただいた時の体験をいかにリッチにするか、ということにすごく気をつけています。

例えば、アルバイトスタッフ全員に、試食出し放題の権限を渡しています。その代わり毎月1回勉強会に出てもらっています。もちろんその時間も時給を支払います。アルバイトスタッフに対し月に1、2時間勉強会を行うことで、どういう事例があって、どういうふうに伝えるとよりお客様に伝わりやすいかなどを共有し、勉強しています。

また、スタッフは全員、1週間に1回、39項目のテイスティングの勉強をやっています。ネット上に回答をアップロードして、木曜日の9時半から10時の30分間は、Zoom上で社内の講師がきて、テイスティングの解説をします。些細な素材の変化や表現を自分たちの言葉で伝えられるようにしています。

さらにこれらの取り組みは、コンテンツにも活きています。写真の取り方も含めて、お客様にどう伝わったら売り上げが上がったのかなど、小さな検証を社内で繰り返しています。その検証結果をリアルの場やSNSの写真のコンテンツに落としていっています。

Minimalによるファン化に向けた取り組みとは?!

<Minimal 山下様>
当たり前ですが、たくさん買っていただくことが、どんどんファンになっていくことだと思います。そのため、お客様にとって自分たちが生活の中になくてはならない存在になる事が、大事な観点だと思います。

1つの取組みとして、Minimalには店舗がありますので、リアルイベントを大事にしています。ワークショップのような長い時間お客様と接点を持てるイベントを行っていて、コロナ前は毎週2回開催していました。イベントを活用しながら、濃いファンを作っています。

また、お客様の傾向を分析すると面白いことがわかりました。チョコレートはスイーツなので、1つ1000円、高くても2000円、3000円です。そのため、多くの方々が手を出そうと思えば手を出せる消費財です。この消費財ということが、食においてすごく大事だと思っています。いかに何回も買っていただくきっかけを作ることができるかが、お客様とのコミュニケーションで大事だと考えています。

面白いデータがあります。例えば、チョコレートは冬しか売れなく、10月に1回目に買っていただいたお客様は、クリスマスやバレンタインなどのイベントがあるので、2回目購入(F2転換)の可能性が高いです。一方で、2月のバレンタインで1回目に購入いただいたお客様は、すぐに暑い時期になるため、2回目を買わずに、そのまま休眠してしまう傾向があります。

これらから分かる通り、お客様にどのタイミングで出会い、どういう商品をどういうきっかけで買ってもらうかを、こちら側が意識して設定することが大切です。それをふまえて、自分たちの全体のマーケティングソースや予算配分を変化させ、一番大事な時期にきちんとお客様と出会えるように戦略的に考えています。

また、「食べる」という行為をいかに豊かな体験にするか、も大事だと考えていて、そのために自分たちのストーリーを伝えています。

僕らは最近、Minimal Collective(ミニマルコレクティブ)というロイヤルティプログラムに近いプログラムをはじめました。Minimalオンラインストア・店舗でのご購入金額に応じてImpact(インパクト)レベルが上がっていきます。レベル0から6まであり、それぞれのレベルに対して、自分たちが何をお客様に情報提供をすべきかを設計してます。例えば、Webでスイーツを多く発信しているため、Minimalを最初スイーツの会社だと思っている人が多くなってきました。そのため、僕たちが何を目指して、どんな生業で出来た会社かを理解いただける3000字ぐらいの簡単なブランドブック(冊子)が届きます。

あとは、CHOCOLATE ADDICT CLUB(チョコレート アディクト クラブ)というサブスクリプションサービスを行っています。月に1回限定のご褒美スイーツが届くサービスです。月4,000円のため、サブスクリプションに移行していただく人は、圧倒的にLTVが上がります。サービスを開始してから12ヶ月程たちます。入った時期によっても多少異なりますが、チャーンレートがすごく低いです。そのため、一つの方向性として、CHOCOLATE ADDICT CLUBにお客様を誘導する導線を作っています。

三ツ星ファームによる
ファン化に向けた取り組みとは?!

<三ツ星ファーム黒川様>
レストランやスーパーマーケットなど、日本の食は最高級レベルで、これらの最高級の食材に慣れたお客様が三ツ星ファームのお客様です。そのため、そこに負けない味を作ることに、すごくこだわりを持っています。具体的には様々な名店とのコラボレーションです。また、最高級の味や名店の味を再現することがお客様にとって非常に重要だと思っています。そのため、自分たちのコンテンツだけではなく、オフラインのすごく著名で長くやっているお店と一緒に取り組みたいと、ファン化の施策では1番考えています。

食材を増やせば増やすほど、選べるメニューが増えてくるため、既存のお客様には喜ばれる一方で、新規のお客様は劇的にCVRが低下します。例えば、30種類のメニュー画面を見せた場合と、60種類、100種類のメニューを画面を見せた場合、後者では新規のお客様は、並んでる食材が全部一緒に見えるため、ある程度、混乱をきたします。そのためセグメントの切り方はすごく重要です。

食べチョクによる
ファン化に向けた取り組みとは?!

<食べチョク山下様>
ファンになっていただくまでの流れには2つあると思います。
まず魅力に気づいていただき食べチョクを利用することが「定着化」すること、そしてその先によりコアなファンになっていっていただくことがあります。アプローチがそれぞれ違います。

魅力に気づいていないお客様にとっては、選択肢が多いことはすごく負担になります。商品数が多いことが根源的な食べチョクの強みである一方で、見え方としては逆になってしまいます。そのため、この商品で間違いないと思っていただくような、商品との出会いの場のサポートをしています。出会いのためのサポートの1つが、パーソナライズ化やレコメンドの強化などのプロダクト面での施策です。また定期便もその役割を担っています。食べチョクのスタッフが選んでいる野菜セットやフルーツが届くことは、間違いなさそうだとお客様に思っていただけるため、その点の訴求を強化したりしています。ファン化の流れの導入口では、数字に基づいてPDCAを回しています。

定着化をある程度超えて、食べチョクにはいいものがある、というイメージが湧いているお客様に対しては、もう少し情緒的な施策を行っています。今比重をかけてるのは前者の取り組みのため、後者の取り組みはこれから力を入れていきます。

これらの取り組みの中で、ファンになる一番のきっかけは生産者さんや商品だということを、我々はきちんと理解し続ける必要があると考えています。生産者さんからのお手紙や、梱包の工夫などがお客様のファン化にすごく効いていると感じています。生産者さんたちご自身にファンがつくような取り組みが大事だと考えています。その一環として、ファンが多い生産者さんから商品づくりのコツや発信方法などを学んでいただく機会を定期的に作っています。

Minimalが実践している
飽きと競合への対策とは?!

<Minimal山下様>
圧倒的に独自で美味しいものを作ることに徹底的にこだわる事が、飽きと競合への一番根本的な対策だと考えています。ただチョコレートは同じものを3年食べたら飽きがくるため、新商品を出し続け、お客様に刺激を与えていくことも大切です。

しかし事業の効率を考えると、新商品だけに頼り続けるとブランド力を弱くしていくため、既存の商品の売り方も工夫する必要があります。生活の色々なシーンの中で、自分たちのチョコレートの美味さに加えて、プラスアルファの効用を載せられると、習慣の中に入っていけると思います。先ほどの画角を引くことも一例です。

健康食品は1回買ったら割とサブスクに向いていますが、チョコレートのような嗜好品は飽きが来るものだと思います。そのときにライフスタイルやライフイベントの中でどういうふうに入っていくかが重要です。美味しいだけではなく、Minimalをまとったり、食べることによる効用をブランドとして訴求します。そして、多様なコンテンツや色んな人とコラボレーションしていくことによって、訴求力を高め続けていくことが大切です。

商品の差別化と自分たちのブランドの差別化は、そのまま競合の対策になるため、ある一定を超えると、競合を気にする必要がなくなると考えています。

これらの2つの差別化を徹底的に磨き続ける中で、品評会への出展などを通じて、自分たちのブランドと商品のステージの位置づけの確認を僕らはやり続けてきました。

三ツ星ファームが実践している
飽きと競合への対策とは?!

<三ツ星ファーム黒川様>
僕らは競合と一緒に生きていくようなプランニングをしています。食卓は生活スタイルや生活様式に入っていくサービスだと思っています。お客様は様々な食・食卓のサブスクリプションサービスを使っていらっしゃるため、その中でも三ツ星ファームに重きを置いていただけるように、我々としては開発していく必要があると考えています。

その一環として、メニューの数はすごく重要だと思っています。僕が食べても飽きがくるので、我々が推奨する食べ方や、段階を置いた選び方はやっていきたいです。1000食プロジェクトと呼んでいますが、1000食ぐらいお客様にお見せできるような形で、様々なメニューの選び方を試していきたいです。

食べチョクが実践している
飽きへの向き合い方とは?!

<食べチョク山下様>
飽きは課題に比較的なりにくいサービスかもしれないですが、「定番化カテゴリ」ーと、「変化があるフレッシュなカテゴリー」に分けて考えています。

 定番化カテゴリーは、卵やサラダ野菜など、家で必ず食べるものです。大きな変化ではなく、「直接生産者さんからくると違うね、美味しいね」をお客様に実感し続けていただくことが大切だと考えています。定番化カテゴリーの食材に飽きてきてしまったときに、そのまま離脱にならずに他の野菜の生産者さんを利用いただけるような体験設計もつくっています。

一方、変化があるフレッシュなカテゴリーでは、「出始めのアスパラがすごく美味しい」など、旬の食材が季節により異なるため、その時その時にすごく美味しいものを伝えることを意識しています。メルマガやお店であるサイト・APPの作り方、プロダクトの機能開発などの設計において重要な観点になっています。

以上が、食ならではの各社のマーケティングの取り組みです。

皆様のマーケティング活動のお役に立てば幸いです。

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