ミセス層を中心とした大規模顧客データベース
―ベルーナ様の事業内容について教えていただけますか?
矢作氏:当社は2025年3月期において約2,108億円の売上を達成し、「顧客志向・顧客密着」をモットーに、「お客様の衣・食・住・遊を豊かにする」という経営理念のもと、通信販売を中心に多様な商品・サービスを提供しています。 主力の通販事業では、中心顧客層は65~69歳の女性で、このうちおよそ3人に1人がベルーナの会員です。現在はカタログ通販に加え、インターネット販売や店舗展開にも力を入れ、 より多様な購買スタイルに対応しています。

―EC事業部は、その中でも「ベルーナオンラインストア」が担当領域ですね。
矢作氏:はい、自社ECである「ベルーナオンラインストア」のほか、楽天やZOZOなどのモール出店や、EC企画商品も取り扱っています。カタログは別事業部ですが、取り扱う商品やカタログ掲載商品が中心となるため、密接に連携を取りながら事業を推進しています。 私たちのチームである「CRM設計室」は、既存のお客様に対するメルマガ発行が主な役割で、顧客転換率を高めLTVを向上させていくことをミッションとしています。
顧客に寄り添う”最適解”が提示できないジレンマ
―今回、CDP/MAツールの刷新を決断した背景についてお伺いしていきます。まずは、いつ頃から検討プロジェクトが始まったのかお聞かせください。
矢作氏:2024年11月ごろから本部内で検討を始め、本格的には2025年2月ごろから開始しました。最終的に6社ほどのツールを比較検討し、半年かけて採用を決めました。

―既に利用しているCDP/MAツールがある中で、刷新を決断するに至った背景は何でしょうか?
課題①:売上は伸びてもレコメンドが伸びない「レコメンド精度の壁」
矢作氏:最も大きな課題は、レコメンド精度の低下でした。会社全体の売上は伸び続けていた一方、レコメンド経由の売上が伸び悩んでいたのです。お客様の嗜好に合わせた商品をご紹介して、お客様一人ひとりに最適な提案をしたいという思いがある中で、既存のレコメンド機能がその役割を充分には果たせていませんでした。
顧客単位にAIで自動化されたレコメンドは出来ても、「特定のテーマやカテゴリ内の商品でレコメンドを実施したい」といった具体的なマーケティング施策に合わせた制御ができませんでした。6商品をレコメンドしたいときに、レコメンド結果から4商品ピックアップできたあと、余ってしまった2枠に入る商品が、意図と全く異なった商品が補填されてしまい、結果として「お客様の嗜好に合わせた商品レコメンド」は納得がいくレベルでは実現できていませんでした。
課題②:メールシステムの到達性悪化による「手動再配信」の非効率
矢作氏:2点目の課題として現行のMAツールでバウンス(不達)が多発してしまい、別途メール配信ツールも併用するという非効率な作業が発生していました。一度MAツールで送信した後に、バウンスリストを出力して、別のメール配信ツールで手動再配信を行っていました。本来注力すべきCRM施策にリソースを十分に割けない状況です。
課題③:問題解決に数カ月かかるサポート体制
矢作氏:3点目は、問題が発生したときに数カ月単位で解決に時間がかかるサポート体制でした。元々利用していたのが、外資ツールだったので、システムでエラーが発生した際、開発元への問合せが必要で解決に時間がかかり大きなストレスでした。
鶴田氏:特に「メールが送れない」という致命的なエラーが発生し、調べていただいても結局納得いく回答がもらえないケースもあり本当に困りました。外資ツール特有の時差表示にも苦しめられましたね・・・。

ベルーナに合わせた「施策提案力」と「使いやすさ」を求めて
―これらの課題を解決すべく、新しいCDP・MAツールに求めた点は何でしょうか?
矢作氏:1点目は、「ベルーナのビジネスモデルに合わせた施策提案力」です。私たちは日々の業務の中で施策を考えていますが、それとは別の「CRM設計の視点」、つまり外部のプロフェッショナルな視点からの提案を求めていました。
2点目は、「現場メンバーの使いやすさ」です。現場がストレスなく、やりたい施策をすぐに実現できる操作性とサポート体制は、ツール導入の重要なポイントでした。
AIMSTAR採用の決め手は、「レコメンド精度」と「データ連携の優位性」
―最終的に、6社から2社に絞り込み、比較検討が進められたそうですね。AIMSTARを選定いただいた決め手は何だったのでしょうか?
矢作氏:情報システム部門から、「データ連携の優位性」の観点で特に2社を推薦されました。
現行ツールでは、連携ファイルが所定の時間までに届かないと、その日のデータ取り込みが空振りになってしまうなど、データ連携の部分で課題がありました。しかし、AIMSTARでは現行ツールのAWS S3連携データがそのまま使えたり、ファイル到着をトリガーとしてデータを取り込めたりなど、データ連携に関しての柔軟性が評価されました。他のツールでも不可能ではないが、加工の手間や工数を考慮すると、プロジェクトの期間内で導入を成功させるにはAIMSTARが最適だと判断されました。最終的には、実際に使用するEC事業本部の希望が実現できるか、操作性が最も私たちに合っているものはどれか、で選定しますが、システム面での推薦も大きな要因の一つでした。
そして、現行ツールでの最大の課題であった「レコメンド」に関しては、デモで即座にレコメンド精度を確認できたことが驚きでした。仮想ECデモという形で、実際にベルーナの商品を取りこんでレコメンドがどのように表示されるのかを体験し、精度についても納得感がありました。他社では、レコメンドに関する理論的な説明はあっても、それを実際に「目」で見られたのはAIMSTARだけでした。 「カテゴリごとのレコメンド」などこれまで実現できなかったレコメンドのカスタマイズについても現実的に可能であるイメージをしっかりと持つことができました。
また、最終的には現場メンバーが「使いやすい」と強く推した操作性が決定打となっています。実際にメールを作成するメンバーが一番使いやすいツールを選定しました。
―ツール選定に際して、大変だった点はございますか?
矢作氏:今時点の課題解決を考えて検討すべきか、数年先のことも考えて検討すべきか。AI周りの技術進化も早い中で、データの取り込みなども含めて、どこに視点を置いて選定すべきかを決めることは難しい点でした。

「最適なタイミングでのお客様へのご案内」に向けたAIへの期待
―2025年10月現在導入プロジェクトの最中です。今後、EC事業部全体で、メールだけではなくWEB接客、LINE、アプリなどでの施策実施や、分析にも活用されていくご予定ですね。
矢作氏:はい、特に期待しているのはAIによる分析機能です。 現在は、初回購買(F1)・2回目購買(F2)のお客様に対しては、一律で同じような施策を実施しています。実際はお客様によって転換のしやすさは変わってくるはずなので、それぞれに最適なタイミングで最適な施策を打つための分析を行っていきたいです。 離脱するお客様に対しても同様で、どのタイミングで離脱するのかを分析して、お客様ごとに施策を実施し、離脱防止策を講じていきたいです。自分たちだけの分析では手が回らない部分はGROWTH VERSEのサポートやAIMSTARの機能に頼り、施策の精度を高めていきたいと考えています。
鶴田氏:他に、以前は難しかった画像ベースで近しい商品をメールで訴求するレコメンドやカテゴリを絞ったレコメンドも実現していきたいです。
矢作氏:将来的には、クーポンの最適化も視野に入れています。「クーポンをお送りしなくても購入されるお客様には送らない」といった、コスト効率も考慮した最適なオファー戦略を展開していきたいと考えています。
―AIMSTAR導入を経て、ベルーナ様が目指す今後の展望をお聞かせください。
矢作氏:目標は、最適な内容と最適なタイミングでのご案内を実現できるCRMの展開です。お客様が真に必要としている情報を、最適なタイミングで、最適なチャネルで提供することで、顧客体験を向上させ、結果的にLTVの最大化に繋げたいと考えています。AIMSTAR導入は、その実現に向けた強力な一歩であり、今後はGROWTH VERSE様と施策の伴走をしながら、ベルーナに最適化されたAIレコメンドやCRM設計を築き上げていくことを期待しています。
―本日は貴重なお話ありがとうございました! 今後、AIによる高度な顧客分析と、それを基にした「最適な内容と最適なタイミング」でのコミュニケーションを通じて、ベルーナ様のCRMは新たなステージへと進化します。巨大な顧客基盤を持つ同社の、LTV最大化に向けた挑戦に今後も注目です。

