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店舗とEC、分断されたデータが描く顧客像の断片
ー ルミネの事業概要とECサイト「i LUMINE」について、改めて教えていただけますか?
早川氏:首都圏中心に駅ビルショッピングセンターの管理運営を行っており、2025年9月に本格開業したニュウマン高輪を合わせると16館を展開しております。売上は店舗が3,822億円、ECが68億円です。店舗は20〜30代の働く女性がメインターゲットですが、ECは30〜40代の女性に多くご利用いただいています。

―店舗を軸に、ECやアプリ「ONE LUMINE」も活用したOMO戦略に取り組んでいらっしゃいますね。
早川氏:はい。アプリ「ONE LUMINE」は、店舗とECのハブとなる重要な立ち位置で、累計400万ダウンロードを突破しました。このOMO戦略は売上観点でも重要で、リアルを基盤とし、店舗体験の利便性を高めていくためのデジタル活用に取り組んでいます。リアル店舗とEC両方を使っているお客様は、片方のみのお客様と比べて年間購買金額が約5倍と非常に大きく、OMO戦略は重要だと感じています。
導入前の課題:OMO戦略を阻んでいたデータ分断の壁
―早川さんはEコマース部所属として、主に「i LUMINE」をご担当されていますね。
早川氏:はい。デジタルマーケティング領域全般を担当しています。販売促進、キャンペーン、CRM、集客が主な範囲です。
―今回、ルミネ様では2024年6月からPoCとしてAIMSTARを採用いただき、1年弱にわたる検証の結果、本導入をいただきました。Eコマース部では、どのような課題を抱えていましたか?
早川氏:ルミネは2024年に、100年先の未来を見据えた「グローバル&サステナブル」を掲げた10年ビジョンを発表しています。中期経営計画の中では「ターゲットの拡張」「提供価値の拡張」「事業フィールドの拡張」を掲げており、特にEコマース部は「ターゲットの拡張」においてCRM戦略を推進しています。
しかし、実店舗とECでそれぞれ別のデータ基盤を使っていたため、データを一気通貫で活用しきれない点が大きな課題でした。

―具体的にはどのような問題があったのでしょうか?
早川氏:主に3つの課題がありました。
① 様々な角度からの分析が難しい:基本的な定型レポートは作成できましたが、特定の顧客セグメントなど、仮説に基づいた深い分析がツールと時間の制約からできませんでした。
② 施策実施後の効果検証が不十分:メールやキャンペーンなどの施策を行っても、分析ツールによってアクセスデータや売上データの定義に差があったり、深く追跡できなかったりしたため、次の施策に活かしきれませんでした。
③ データ統合自体が困難:店舗とECでデータの持ち方や利用ツールが異なり、公式の分析データとして活用することができませんでした。
―定型レポート以外の分析は、都度対応だったのでしょうか?
早川氏:はい。既存の分析ツールのデータを組み合わせることで分析は行っていましたが、それでは対応しきれない場合は、システム担当に依頼して必要なデータを出力してもらい、要望に合っているかを都度確認するという非効率な流れでした。
PoCと選定理由:分析とMAを両立するオールインワンソリューション
―3つの課題を解決し、分析の高度化と施策のPDCAを回すことで店舗とECの売上拡大を目指すためのプロジェクトだったのですね。今回、導入に際して、PoCを実施されたのはなぜですか?
早川氏:やはり売上という重要な基幹データであるため、一部メンバーで数値検証を含めたトライアルを行い、部署全体に展開するPoCを実施することにしました。

―複数ツールを比較検討されたかと思いますが、どのような基準がありましたか?
早川氏:大手を含む数社ほどを比較検討しました。もともと店舗とECで異なるツールを使っていたため、今後も見越してできるだけ複数ツールを入れないようにしたいと考えていました。
そこで今回は、「分析」と「MA」両方を1つで対応できる点と、今後の拡張性、費用面、そしてサポート体制の手厚さからAIMSTARを選びました。
波多野氏:既存の定型レポートが再現できることと、新たなデータを追加して定型レポートに加えることのしやすさを主に検証しました。追加したデータにより、業務負担がどのように変わるのかなどの観点も検討して絞り込みしました。
導入後の効果:分析時間が1週間から即日へ
―PoCでは実際に分析ができるかどうか、定型レポートを移行できるかどうか、MAとして利用できるかどうかなどを検証いただきました。結果、2025年春から本採用をいただき、Eコマース部全体でご活用いただいております。現在はどのようにご活用いただいていますか?
早川氏:分析用途では、定型レポートの作成はもちろん、各ショップ担当者が自分の担当ショップに絞った分析レポートを作成しています。さらに、一部のメンバーは優良顧客などのセグメントに絞った分析や、リアル店舗の利用状況と絡めた深掘り分析などを行っています。
波多野氏: AIMSTARのユーザー数はだいたい30人くらいです。以前は限られた人数しか利用できなかったのですが、導入後は各ショップの担当者が分析に使用したり、メール施策担当者がセグメントメールを作成したりと、部署全体でそれぞれの役割に応じた利用ができるようになりました。
―MAとしてはどのように活用していますか?
早川氏:メールとLINEでお客様に対してアプローチをしています。メールは、スポット配信と自動配信の大きく2種類に分かれています。スポット配信では、ある程度粒度を絞って、人気アイテム紹介、キャンペーン紹介などをほぼ毎日配信しています。
自動配信は、例えば初回購入者へのフォローアップなどシナリオメールを送っています。メールでは情報提供をメインに、LINEでは現在開催中イベントなどをメインにした内容をお送りしています。

―導入後の効果で、特に実感している点はありますか?
早川氏:シナリオメールの配信数自体はまだ多くはありませんが、お客様の状況に応じた内容をお送りするので、LINEに匹敵する開封率があり手ごたえを感じています。ターゲットを絞ったメールは開封率が跳ね上がるので、今後もシナリオメールを増やすことで売上拡大につなげていく見込みです。
分析作業は劇的に効率化されました。今まで1週間かかっていた作業がその日のうちに完了するようになり、本当に助かっています。分析結果がすぐに出るので、意思決定のスピードが上がり、施策を回すスピードが段違いに早くなりました。
波多野氏:データが統合されたことで、「分析したくてもデータがない」という状況がなくなりました。ユーザーのニーズに応え、大幅な時間短縮につながっています。
今後の展望と他社へのアドバイス
―今後、AIMSTARを活用してどのような取り組みをされていきますか?
早川氏:シナリオメールを充実させていくことと、実店舗とECを掛け合わせた分析を深堀し、OMO戦略におけるCRMツールとしてさらに活用していきたいです。よりお客様の嗜好にあった商品レコメンドについても取り組みを始めています。
―最後に、CRMやMAへの取り組みを検討される企業に向けて、アドバイスをお願いします。
早川氏:データ量が膨大な場合、データ統合などの面でプロジェクト進行の負荷が大きくなり大変ですが、データを見えるようにする価値は必ずあると考えています。
波多野氏:各社で使っている用語や定義がそのまま通じることは稀です。プロジェクトをスムーズに進めるには、事前にその共有をしっかり行うことが重要ですね。
―本日は貴重なお話ありがとうございました!